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環日本海域における先端的な大気エアロゾル観測施設の拡充と
その国際ネットワーク形成への取り組み

地球温暖化はCO2 (二酸化炭素)だけの問題ではありません

img 大気中には気体の他にも目に見えない大きさ(1ミリの1/1,000~1/1,000,000程度)の液体や固体からなる粒子(大気エアロゾ ル)が無数に存在しています。この大気エアロゾルと呼ばれる微粒子が地球大気を温めたり、冷ましたりする効果が、CO2などが持つ温室効果と 比べても無視できない気候変動因子として注目されています。

大気エアロゾルは人々の健康や気候に影響を与えます。

大気エアロゾルには風で大気中に巻き上げられた砂(例えば黄砂)や海水のしぶき(海塩)、燃焼過程で生成する煤(すす)粒子のほかにも、二 酸化硫黄や有機化合物などのガス成分が酸化されて大気中で粒子化するものなど様々なものが存在しています。これらは視程の悪化や健康被害をも たらす大気汚染の原因となるばかりでなく、太陽光を散乱、吸収することにより気候にも大きな影響を及ぼしています。 大気エアロゾルはCO2などの温室効果ガスと比較して寿命が短いうえ、発生源も多種多様であることから、その挙動はきわめて複雑で、その存在 が将来の気候変動を正確に予測する上での大きなハードルとなっているのです。


環境問題を正確に理解するために。

大気エアロゾルと気候の関わりを考える上で、もうひとつ忘れてはならないのは大気エアロゾルが雲のできかたを変化させる効果です。 雲粒ができる時には必ずその「種」として働く粒子が必要であり、言い換えれば大気エアロゾルがなければ今日のように雨や雪が降ることもありま せん。雲の種として働く粒子が水に溶けやすいか溶けにくいかによってできる雲の性質は大きく異なります(例:水滴or氷の結晶)。

img 例えば黄砂などの鉱物粒子は古くから水に溶けにくいエアロゾルの代名詞として取り扱われることが多かったのですが、近年、黄砂が長時間 かけて大気中を輸送される過程でその粒子が硫酸塩や硝酸塩などの水に溶けやすい物質でコーティングされている事例も多く報告されるように なり ました。 当研究室では、とりわけこうした異なる成分同士の粒子中での混ざり具合(混合状態)とそれに伴う物性の変化に着目し、その環境中でのふるまい (光の散乱吸収特性、吸湿特性)を明らかにすることで、地球温暖化をはじめとする環境問題のより正確な理解に貢献することを目指していま す。

連絡先

金沢大学
環日本海域環境研究センター

松木 篤

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